30回100Kウオーク24

 100キロを歩き通すということはどんなことだろう。ウルトラマラソンでは100キロ以上を走るというレースは、国内でも何十とある。しかし、走るのではなく、24時間で歩き通すという、酔狂とも思えるこの遊びはなかなかできるものではない。しかし想像するだけでは、やってみないことには語れない。こんな思いと共に、今回は30回目の記念大会であり、また最終回となることを知り、参加することを決めた。

 この大会は群馬県のJR両毛線桐生駅をスタートし、わたらせ渓谷鉄道沿いに国道122号を北上し、栃木県に入り足尾、そして終着駅の間藤から日光方面に向かって国道を歩く。細尾峠手前で、スタートから50km地点に折り返し点を設け、ここで来た道を戻る。往復100km、標高差700mの行程で、これを24時間内に歩き通すという企画である。

 スタートは桐生駅前午後5時。雨のため駅構内での開会式となる。関係者の挨拶、地元お巡りさんからの注意などを聞く。参加者はほとんどが中高年であるが、その中でも遠距離からは今回で4回目の参加という広島からの女性、最高齢は1ヶ月後に84歳になるという男性が紹介され、彼は戦地での苦しい行軍を思い出し、励みにして歩くというようなことを話していた。参加者には帽子と赤の点滅ライトが配られた。この点滅ライトはこれから夜どうし道路を歩くため安全確保としてザックなどに装着することになる。本大会は今年で最後ということで、例年100人くらいの参加者が、今回は160人を越えているようだ。 

  駅構内で集合写真を撮り、17時スタート。雨はとりあえず止んでいるが、上空を黒い雲が覆い、だいぶ暗くなっている。しばらく歩くと雨が降り出した。 スタートから16キロ地点で最初のチェックポイントとなるわたらせ渓谷鉄道の水沼駅に19時50分に着いた。上下線のホームを貸し切り状態で参加者は思い思いの場所で腰を下ろす。ここでは湯茶の接待があり、塩もみにしたキュウリが美味しくたくさん頂いた。休憩時間は十分あり、この間に参加者全員が到着したようだ。ここでの出発は20時30分で全員が揃って出発した。

  2回目のチェックポイントは26q地点の東葉電機という民間の会社で22時30分に着いた。ここは建物の中で雨の心配もなく、ゆっくり腰を下ろし休むことが出来た。スタッフの人たちが用意してくれた温かいお茶、バナナや団子を頂いた。しばらくの休憩後、闇の中を再び歩き出すが、ここでリタイアする人が出始める。歩き始めてほどなく午前0時を迎え日付が変わり、そして群馬県から栃木県に入る。

  3回目のチェックポイントは42q地点の通洞駅で2時30分に着いた。ここでもリタイアする人が多かったようだ。この先折り返し点まで8kmだが、歩き始めて10時間近く、しかも絶え間なく降り続く雨の中の歩きで、疲労もだいぶたまっている。リタイア者はこのまま通洞駅にとどまり、翌日5時52分発の始発電車で桐生駅に戻るという。

   しばしの休憩後、気力を振り絞って歩き出す。渡良瀬川の支流に架かる橋を渡る。暗闇の中からカジカガエルのさわやかな鳴き声が聞こえる。トラックがすぐ脇をスピードを落とさずに通り過ぎ、容赦なく水しぶきを浴びせる。マメがつぶれて痛いが、時折ふぅーと引きずり込まれるような眠気を覚える。

   4時2分折り返しの50q地点に着き、ここでUターンする。うっすらと空が白み始めた。
   5時21分通洞駅に戻り、ここが58q地点で4回目のチェックポイントとなる。ここでは温かいけんちんソバが振る舞われた。十分な休憩を取り、空もすっかり明るくなり、元気を取り戻し歩き始める。しばらく歩くと雨が激しくなり雷鳴も聞こえ始め、雷におびえながら歩き続けた。

   9時55分、5回目のチェックポイントで72q地点である草木ダム近くのドライブインに着いた。この頃には雨は上がっていた。ベンチにどっかりと腰を下ろす。隣の人が靴下を取り替えるために靴を脱いだ。足は白くなり、水のためふやけて、爪は全て黄色く変色していた。これを見て誰かが、まるで土左衛門の足だという。なるほど、見たことはないが土左衛門の足とはこのようなものなのかと、思わず見入ってしまう。十分の休憩を取り再び歩き始める。
   スタートから84q地点で最後のチェックポイントである水沼駅に着いた。足が重く全身が疲労感に包まれるが、ここまで来たら100km中の残り16km。休憩後、気力を振り絞って歩き始める。

 3時35分スタッフの人たちの拍手に迎えられ感激のゴールとなった。

  今回の大会は、参加者146人中89人が歩き通し、完歩率61%ということだが、たくさんのスタッフの方々に支えられた素晴らしい大会でした。