八溝山地の南に位置する筑波山塊の難台山や愛宕山、その扇状地に広がった笠間市の旧岩間地区には湧水が豊富で、
このため湿原が多く存在する。
野口池周辺は、自然環境保全地域に指定された低層湿原で、数千年前の間氷期には海が入り込んでいた。
このため、ここでは海岸付近で生育する植物や、温帯から冷温帯に生育する植物と、暖地性の植物が混在している。
             
野口池。
上流には野口池湿原がある。
静かな湖畔は、時折静寂を破り、ウシガエルの鳴き声が響く。
カモが泳ぎ、コサギが餌を狙うように水面を見つめている。
 湿原入口には、「みんなで守る豊かな自然」、「外来植物厳禁」と書かれている。
ここには、茨城県で絶滅危惧U類に指定されている食虫植物の、モウセンゴケが生育している。
しかし、人の手によって持ち込まれたと見られる、外来種のナガエモウセンゴケがはびこっている。
湿原には、保護のために木道がつくられている。
この木道は、地元押辺地区環境保全協議会の人たちが、設置したもの。
キク科のサワヒヨドリ(沢鵯)が、多く見られた。 
アシ原の中に、キキョウ科のサワギキョウ(沢桔梗)が咲いていた。 ラン科のミズトンボ(水蜻蛉)。
これも、絶滅が心配される植物。
ツユクサは、空き地などで青い花を咲かせているが、これは同じ仲間のイボクサ(疣草)。
ツユクサによく似た葉に、薄いピンクの花弁が3枚ついている。 
シソ科植物のヒメジソ(姫紫蘇)。
同じ仲間のイヌコウジュによく似ているが、湿地という生育環境や、鋸歯の数で見分けられる。
 
今回は、モウセンゴケもナガエモウセンゴケも、見ることはできなかった。
この野口池湿原は、面積の小さな湿原。心無い人間によって、簡単に自然は破壊されてしまう。
私たちも、保全活動に携わる人たちとともに、 自然を荒らさない、外来生物を持ち込まないよう、心がけましょう。

朝日新聞社発行の「茨城の自然100選」には、ここで紹介する野口池湿原と共に、土師 (はじ) の湿原が案内されている。
このため、野口池湿原から 「土師湿原」を探しました。しかし、 「土師湿原」を見つけることはできなかった。
 後日、笠間市役所に湿原の存在を問い合わせたところ、次のような回答をいただいた。
『「土師湿原」については、どのような経緯で記載となっているのかは不明で、市指定文化財にも未登録の地域であります。
おそらく地元の有志により管理が行われているものと思われますが、あいにく市では詳細を把握しておりません。』
 野口池湿原
        笠間市  (2015-07-11)(2015-09-12)