表日光連峰縦走
平成20年7月12日〜13日
 712(土) 霧降高原バス停→キスゲ平→焼石金剛→赤薙山→2295m峰→女峰山→帝釈山→

富士見峠→小真名子山→鷹ノ巣→大真名子山→志津乗越 (幕営)
 713(日)  志津乗越→男体山→二荒山神社

  霧降高原キスゲ平駐車場に車を止め、758分歩き始める。この時期はニッコウキスゲが見ごろで、先日もテレビで報道されていた。その影響もあるだろうか、駐車場はこの時間ですでに満車、ロープウェイ乗り場は渋滞している。久しぶりの単独縦走で、気持ちが高ぶる。真夏日が予想される天気予報のこの日、ミズナラやハウチワカエデなどの樹林帯の中、涼しくて気持ちよい山歩きが始まる。遠くにはカッコウ、森の中ではハルゼミが鳴く。樹間から右手に丸山の円錐形の頂が見え隠れするようになると、登山道は傾斜を増し、汗が噴き出してくる。やがてロープウェイの音が聞こえなくなり、キスゲ平の展望台に着いた。ここはこれから歩く赤薙山方面に通じる尾根の上で、ロープウェイで上がってきた人たちがくつろいでいる。尾根道はきれいに樹木が刈り取られ、人工的に遷移を止めているようだ。ササが生い茂るなかに、白い花のコメツツジ、ミヤマカラマツ、それに純白のツバメオモトが咲く。遮るものがない尾根歩きだが、雲が多く時折涼しい風が吹き抜け、心地よい。道はいつの間にか右手の丸山を見下ろす高さまで登ってきている。

951分、赤薙山山頂に着いた。ここには赤薙山神社が祀られている。コメツガ、ダケカンバ、ナナカマド、ツツジ類に覆われ、視界は得られない。赤薙山からはしばらく樹林帯に囲まれたやせ尾根となる。ベニサラサドウダン、ゴゼンタチバナが咲く。女峰山から来たという登山者と会い、エアリアに書かれた女峰山手前の水場情報を得る。地図ではこの水場は細いと書かれているが、どうかと尋ねると、冷たい水が十分な量で流れているという情報を得た。今日は暑く水をたくさん飲んだが、これで安心して飲める。登山道にはイワカガミ、マイズルソウ、ミツバオウレンなどが咲く。道は2295m峰手前で、ほぼ平坦な長い尾根歩きが続く。シラビソやダケカンバの樹林帯の中、林床にはコバイケイソウ、それにシャクナゲがたくさん見られる。シャクナゲはつぼみをつけているものがあるが、コバイケイソウはほとんどつぼみはなく、今年は外れ年かもしれない。樹林の中は樹木から発するフィトンチッドの香りが漂い、これぞ森林浴という中を歩く。上空には雲が多くほとんど視界が得られない。わずかに青空がのぞくが、すぐ雲に覆われる。女峰山への登りはザレ場の道となる。急な斜面を登りながら周りを見ると、ミヤマダイコンソウ、ウラジロヨウラク、チシマゼキショウが見られ、疲れを癒してくれる。1248分、ピーク上に三角点があった。しかしこの少し先にここより高い場所があり、祠みたいなものが見える。地図を見ると三角点と女峰山のピークとは違うようだ。あれが山頂か。

1253分、女峰山に着いた。祠の前では10人くらいの中高年登山者グループが食事をしたり、ビールをうまそうに飲み干す。雲が多く遠望はきかないが、展望はよい。西方面にはこれから行く帝釈山、小真名子山、大真名子山がはっきり見える。ツマトリソウとホソバイワベンケイが咲く山頂で昼食をとり、歩き出す。帝釈山までの道はやせ尾根となり、帝釈山からの下りは深くえぐられた沢道となる。おそらく雨が降ればたちまち川となり、岩がごろごろした歩きにくい道となるだろう。帝釈山から小真名子山までは富士見峠まで400m下り、そこから300m登り返すアップダウンの激しい急斜面となる。樹林の間から小真名子山が大きく見え隠れするようになった。遠くから見ると小さな山だが、今は目の前に大きく立ちふさがる。

232分、帝釈山からの長い沢道を下り、富士見峠に着いた。「野洲原林道(自動車道)終点」と書かれた標識があるが、石がごろごろし、自動車が走れるような道ではない。小真名子山への登りは、樹林帯を抜けるといきなり急斜面のガレ場となり、非常に歩きづらい。先ほどの樹林帯の歩きでひいた汗が、再びどっと噴出してくる。後ろを振り向くと立ち枯れた木が目立つが、オオシラビソの樹林帯で美しい林層を示し、見とれてしまう。

326分、小真名子山に着く。振り返ると雲間から青空がのぞき、帝釈山が真近かに見える。ここには電波の反射板が設置されている。

458分、大真名子山に着いた。ここには等身大の蔵王権現像が祀られている。前方には男体山の雄大な姿が見え、後ろを振り向くとこれまで歩いた山々の稜線が見える。大真名子山山頂からはいきなりの急降となる。梯子がつけられていて、少しの緊張を強いられる場所である。真正面に大きな男体山が見える。時間も過ぎ急斜面に夕日が沈み、残照が西の空を薄あかね色に染める。近くでシカの鳴き声が聞こえる。怪しげな侵入者を、仲間に知らせているのだろうか、もう少しで志津小屋だ。

大真名子山からこれまで歩いた稜線を振り返る。

 
 
540分、志津林道に出る。小屋はすぐ先だが今日はここで星空を見ながらの幕営としよう。 レトルトカレーの食事を済ませ、お楽しみの一杯となる。しかし日本酒を少し飲んだらもう酔いが回ってきた。すっかり日も落ち、遠く近くからシカの鳴き声が聞こえる。

早朝550分、テントを出発する。正面に男体山がくっきりと見えている。周囲にはいつの間にか車は10数台はあるだろうか。青空の中に筋雲が見え、今日の山行を期待させてくれる。ダケカンバの林、志津小屋方面に向けて歩く。野鳥のさえずりがあちらこちらから聞こえる。すぐに志津小屋に着く。ログハウス風の二階建ての立派な小屋だが、水がないのが不便だ。宿泊者に聞くと昨夜は2人だったとのこと。小屋の前を通り、男体山に向かう。

1合目558分、2合目66分到着。これまではコメツガ、アスナロなどの針葉樹林の中の歩き。ここでもフィトンチットの香りを浴び続けながらの山歩きで、心地よい。

3合目614分、4合目628分着。樹林帯が続くが、徐々に傾斜がきつくなる。

5合目641分。汗が噴出す。

6合目656分。まだ樹林帯の急登が続くが、振り返ると昨日登った大真名子山を樹間から見ることができる。まだまだ大真名小山のほうが高い。あの高さになってそれからまだ110m登る男体山だ。

7合目79分、8合目722分。植生はダケカンバやシャクナゲなどの広葉樹となる。8合目を過ぎると溶岩の固まったガレ場の登山道となった。これまでの縦走路の稜線がはっきり見える。大真名子と同じくらいの高さまで登ったろうか。傾斜がだいぶゆるくなった。

大真名子山方面から男体山

9合目742分、展望がいっそう広がるが、ガスが上がってきた。山頂で360度の展望が得られるか心配だ。ほとんど起伏のない、走り出したくなるような縦走路の歩き。それにしてもこれだけの標高まで森林が発達しているというのも驚きだ。ダケカンバ、オオシラビソ、シャクナゲ、コバイケイソウもたくさん見られ、林床にはササが茂る。志津方面からのこの雲上の道は、二荒山神社から往復するだけの登山では、わからないかもしれない。周囲には素晴らしい豊かな日本の森林が展開する。

753分、男体山山頂に着いた。西方面は雲海が広がり360度の展望とはならないが、北西や南には山々が広がって見える。眼下には中禅寺湖、その先に足尾山塊が広がる。