日留賀岳 
所 在 地  栃木県塩原
山行期間   5月1日
登山口・白戸集落・小山氏宅(1:20一)林道終点(1:40一)木の鳥居(1:30一)日留賀岳(1:00一) 木の鳥居(1:10一)林道終点(0:50一)白戸集落
( )内は参考コースタイム


   前日、目が覚めた時点で出発しょうと考え、目覚まし時計をセットせずに床についた。
翌日真っ暗闇の中目覚めたが、もう少し寝よう、だが今何時だろうかと考えているうちに目がさえて布団から起き出し、時間を確認したら2時20分。もう出ちやえと決断し、このまま2時45分に車で家を出た。途中コンビニで朝食と昼食を買い込み、塩原温泉街を過ぎる頃には、すっかり明るくなっていた。

   登山口となる白戸集落の小川氏宅脇駐車場には5時15分に着いた。このお宅は日留賀岳の登山口にお住まいの、小山秋雄氏宅で、登山者のため自宅脇に駐車場をつくられている方である。家の方が起きていれば挨拶をと考えながら、家の中を覗き込むように玄関前を通り過ぎたが、中は暗くまだ家の人は寝ているようであった。
 5時30分、小山氏宅を出発、早朝の登山開始だ。小山氏宅の前庭を通り裏山に入る。竹、杉の林を過ぎ、このあたりはまだいかにも里山という感じの朝日の射し込む落葉樹林の、芽吹き始めた低木の間を気持ちよく歩いた。すぐに林道に出る。あれ、ここまで車で来られたかな、なんて考えながら歩いているうち、道路上に多くの石が目につくようになった。進行方向左手が山側の斜面で、右は谷川の崖となっている。山側の斜面は所々小さな崩れが目につく。道路上の石はここから落ちてきているのだ。が、この辺はまだ、車が入ってこられそうだ。今日はよく晴れ、周囲の展望は最高だ。人工の音は何一つ聞こえない静寂の中、近く、速くにウグイスと山雀の鳴き声が響きわたる。
 
  やがて林道には大きな落石が目につくようになった。山側の斜面には大きな崩落があちこちで発生している。右手を見ると谷川の斜面も大きく崩れ落ちているところがある。この先は道路が土砂や落石で寸断されている。もう車の通行は不可能だ。崩れ落ちてきた土砂の上を歩くうちにもう林道終点だ。ここから再び私の好きな落葉樹林帯に入る。
 
私はこの山行数日前地形図に、ガイドブックに書かれている情報を書き込んでおいた。ガイドブックにはここ日留賀岳は行程は長いが、静かな山歩きが楽しめると書かれている。ガイドブックのガイコツ図を見ると、目標となるのはほとんどが登山路上の植生で、山を歩く上でこれを見極めるのが大事だと考えた。実際歩いてみるとその通りで、植生の区分が実に明らかである。登山道は林道終点の落葉樹からカラマツ林に入った。見上げるとカラマツの枝先に小さな芽吹きが日差しの中、あざやかに輝いていた。また、足元を見るとカタクリの花。決して群生状態ではないが、登山道の、足下とか少し先の樹林帯の中とかに、ポツリポツリと咲いている、今が盛りのこのカタクリの花が素晴らしかった。

カラマツ林を過ぎるとブナとミズナラの混生する樹林帯で、道の傾斜がきつくなった。しばらく歩き、急登が終わりにさしかかるとアスナロの木が多くなる。このあたりに来ると次の目標となるものは、ガイドブックには「木の鳥居」と書かれている。これまで登山口からここまで人工のものは何もなく、倒木を時折見かけるが、この倒木がうまい具合に鳥居のように倒れているのか、などと考え、鳥居を探しながら歩いた。アスナロの林もすぐ終わり、また落葉の樹林帯に入った。と、すぐに鳥居があった。なるほど木の鳥居とは間伐したような木を鳥居状に組んであった。これはまさに鳥居だ。この鳥居を過ぎるとまもなく下りとなり、鞍部から日留賀岳に向かっての最後の登りとなる。

この辺からギョウジャニンニクの群生が続く。この「ギョウジャニンニク」は、私が長い間採取欲に駆られていた山菜だが、北海道にしかないと思いこんでいたものである。道は徐々に傾斜を増してくる。「ギョウジャニンニク」の群生も終わり、尾根筋には沢山の雪が残っている。アイゼンをつけようか、つけまいか考えているうちに深いササに分け入り、途中残雪で道を見失しない、少しの間ヤプこぎを強いられたが、すぐに山頂に着いた。時計を見ると7時50分。ウイークデーでは出勤前で、自宅でお茶を飲んでいる時間だ。この時間に深山の自然に浸っている自分をすごく幸せに感じた。
   この日の日留賀岳は風もなく最高の天気に恵まれ、会津や尾瀬の山々、那須連山そして間近にまだ沢山の雪を冠した日光連山が、最高の展望を与えてくれた。

 帰りの登山口で偶然にも小山氏ご夫婦に出会った。お二人としばらく立ち話をしているうち、ご主人が「あなたならだいじょうぶでしょう」と言い、私を「イワウチワ」の群生している場所に案内してくれた。だいぶ盗掘されたと言うがピンク色の可愛らしい花が、今が盛りと咲いていた。
   この日は山菜の「ギョウジャニンニク」と「ヤブレガサ」をおみやげに、途中塩原で吊り橋を渡ったりして、のんびりと帰宅した。