茨城のヤブ山歩き(No.139)  いぶき山(約16m)  

2万5千分の1地形図「高萩」 日立市  平成25年06月22日

  高萩と日立の市境界が太平洋に接し、そこから少しだけ日立側に入った所にいぶき山はある。山とはいうが、地形図に三角点はもちろん、等高線も書かれていない。天然記念物を示す特定地区記号が書かれ、そこに「いぶき山イブキ樹叢」と書かれている。海抜0の海から標高10mに満たないため、等高線は書かれていない。つまりいぶき山の高さは、と聞かれたら、標高10m未満ということになるだろう。


  930分、花貫川が太平洋に注ぐ、そこに車を停めて堤防を歩く。前方すぐ先にいぶき山が見える。海岸を見ると波際では投げ釣りをする人、沖合いではサーフィンを楽しむ人が見える。コンクリートの堤防から、砂浜に入る。海浜植物を観察しながらゆっくりと歩くも、すぐにいぶき山に着いた。ぐるっと一周しても、ほんの数分で振り出しに戻るような小さな山は、国の天然記念物であるイブキ樹叢を守るために、周囲をフェンスで張り巡らされて、中に入ることはできない。


 イブキはヒノキ科の針葉樹で別名ビャクシンともいい、庭木などに利用されている樹木で、樹叢とは木が群がるとか、集まって生育している状態を言い、かつてはイブキが樹叢状態だったのだろう。

フェンスに取り付けられた案内板には、

「いぶき山は標高16.24m前後の砂岩で構成された孤立峰で、明治30年頃までは鬱蒼としたイブキ林であったようだ。江戸時代に書かれた「常陸帯」という道中記では、イブキの姿が龍や虎のようだ、と紹介している。


   国の指定は、イブキの自然分布北限に近いこの地にまとまった本数の樹叢であることから、それを保護するためだった。その後は伐採や盗伐などで本数が減少し、近年では推定樹齢400年のイブキが山の南側に3本、北側に5本あるだけとなり、イブキ以外の樹木が繁茂し、イブキの樹勢も衰えが見られる。」などと書かれている。


 国指定の天然記念物で、国が決めることだろうが、イブキ樹叢を守るためには、樹勢の強いイブキ以外の樹木を除伐し、遷移を止めて、その上でイブキの幼樹を育てるしかないだろう。

 

 
 いぶき山 全周フェンスが張られている 
 上部の樹木がイブキ 案内板